遅ればせながら、本年もよろしくお願い申し上げます。
色々忙しく、以下は2004年3月末に書いた文章のベタ貼り御免。
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「Traversing Jazz ジャズを横断する」第八回
-ドンカマ世代の延長線上に見えるもの-
by 椎名 達人
マルチチャンネルの録音が当たり前になる70年代以降、リズムの管理のために、つまり早くなったり遅くなったりしないで一定の早さを保つために「ドンカマ」と呼ばれる発信器的というかメトロノーム的なものが導入される。管理されたリズムの下地があれば、オーバーダブを行う楽器奏者は非常に演奏しやすいわけで、例えばフィルインだけ早くなったり遅くなったりするドラムの演奏にホーンセクションのフレーズを重ねたたためにそこが非常に雑に聞こえたりしてしまうということなどが無くなるのだ。
70年代に流行ったディスコミュージックの多くはテンポがドンカマで管理されている。言うまでもなく、この一定のビートをいつまでもキープするある意味規格化された音楽は、特にハウスを中心としたDJingにとって必要条件を備えた音楽の原型となるであろうし、現在多くのポピュラー音楽のコンポーザがコンピュータを使って作っている一定のテンポを崩さない音楽の母体となりもしよう。それは、現在コンピュータを使って作られている音楽における想像力の地平、下地を構成したのだ。
ドンカマの導入によって、タイトに一定のリズムを保つことができるドラマーが音楽シーン(あるいは音楽産業)において重宝されるようになる。ドンカマはポピュラー音楽を変えたのである(現在の状況をその延長線上にとらえることもできる)。例えばスティーブ・ガッドやジェフ・ポーカロなどは、そうした音楽の変容とマッチしたドラマーの代表格といえるだろう。面白いことに、80年代には、スティーブ・ガッドのドラムはどうも機械的でよろしくない、と述べるむきが結構いたりしたものである。確かにタイトではあるが、今聴くと機械的とはとても思えないのだが・・。まあこれは、当時のフュージョン(クロスオーバー)を中心とした音楽において、イーブンな16分音符の裏のアクセントをきちんとアーティキュレートし得るスタイルがかっこいいものと位置づけられていたということとも関係するのだが。しかしそのこと自体、ドンカマによるテンポ管理の一般化が、テンポ管理と親和的なテクニック(例えばスティーブ・ガッドの場合はマーチングのドラミング)を求めたのだと考えることができるだろう。
いずれにせよ、今回いいたいのは、ミュージシャンは、ドンカマによるリズムの管理にその身体性を適合させるべく強いられた、ということだ。しかしこのある意味強制的なディシプリンは、新たなかたちのスタイルを生んでいくことにもなるのだ。ところでそもそも楽器を弾けるようになること自体、楽器というマシンに人間の身体を適合させることではないか。この場合、道具と人間の身体性とのあいだのある種の緊張関係が、何かを生み出すというわけである。
例えば90年代に流行ったドラムンベースは、過去のドラムプレーヤーのプレイをずたずたに切り分けて再構成しつつそれを高速にしたもので、いうまでもなく、それはサンプラーやコンピュータによって生み出されたものだ。そしてそれは後に、生身のドラマーによっても取り入れられることになる(人力ドラムンベース)。機械によって作られたドラムンベースのパターンやグルーブに、自らの身体性を適合させるドラマー。しかし、それは、ドンカマに合わせることを強制されたドラマーとある意味、同じことなのだ。
ディーントニ・パークス(Deantoni Parks)というドラマーがいる。ジャズの名門学校であるバークリーで学んだドラマーなのだが、クラブシーンで生み出された様々なビートに身体性を適合させるという意味では抜きん出た存在の一人ではないかと思われる。私はたまたま偶然にも、1999年か2000年のどちらかにニューヨークで彼のプレイをみて(KUDUというバンドでのプレイ)、非常に大きな衝撃を受けた。アンダーグラウンドなヒップホップ、ティンバランドに代表されるメジャーなヒップホップ(日本ではチキチキとよばれているようなやつ)などのパターンやノリを、生ドラムで自在に表現するのだ。もちろん生なのでフレキシブルである。インターネットやバークリー同窓のドラマーによると、彼はローリン・ヒルのライブやレコーディングにも参加してるそうである。
0年代の方向性というものがあるするならば、このあたりにヒントがあるのではないか、となんて思うのだ。ただしそれは、70年代から継続している方向性でもあるのだ。
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これ、フランクフルトから帰る直前に書いたものだったと思う。もうすぐ3年になるのだなあ。。
その後2005年頃にまたKUDUのライブを聴く機会があったのだが、ディーントニパークスは、ほぼドンタンドンタンのみ。80年代ニューウエイブっぽくなっていてちょいと意外な驚き。でもバンド(メンツは3人のみになってた)としてカッコ良くなっていた。Deantoni Parksはンデゲの新譜に入ってるらしいす。